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民事信託を使った空き家対策の事例です。
2018/10/15
空き家にならないためには、親が認知症になる前に、何らかの対策を取る必要があります。今回は民事信託を使った空き家対策(親の認知症対策)をご紹介します。
相談事例
将来、親を呼び寄せたり、介護施設に入所させたりするために、実家を売却して諸費用に充てたいが、親が認知症になると、売却が難しくなってしまうのが心配。相談者
Aさん(50歳)福岡市在住。Aさんの父Bさん(80歳)は福岡県にある実家でひとり暮らしをしている(母は既に他界)。
Bさんはひとり暮らしの生活が大変なようなので、近いうちにBさんを福岡市に呼び寄せて一緒に暮らすか、または介護施設に入所させて、ゆっくりさせてあげようと考えている。
今の実家は他に住む予定の人はいないので、売却してBさんの施設への入居費や介護費用に充てたいと考えているが、すぐに売れる保証は無い。
もしBさんが認知症や重い病気になってしまうと売却することができなくなってしまうので、何か対策はないだろうかと考えている。
今回の信託スキーム
・委託者兼受益者をBさん、受託者をAさんとする。信託財産を実家とする。・信託契約で「Aさんが実家を売却できる」と定めておく。
・もしBさんが亡くなっても、その後Aさんが実家を売却し、その売却代金を相続人に分けるように定めることができるようにする。
信託を利用するメリット
・Bさんが委託者兼受益者なので、信託設定時の税金は登録免許税のみ。信託設定時に不動産取得税も譲渡所得税も発生しない。・Bさんが認知症になっても、Aさんが受託者の権限で不動産を売却することができる。
・信託財産の売却はBさんに対する課税となるので、居住用不動産の売却として、特別控除の特例が使える。
・不動産を売却した後の売買代金はそのまま信託財産とし、AさんがBさんのために使用する事ができる。
・Bさんの死亡後の売却代金の承継先を、あらかじめ定めておくことができる(遺言の代わり)。
最後に
認知症による問題は誰しもが経験する事ではないため、一般の方は認知症になったあとどのような問題が起こるかを具体的に把握する事ができません。認知症になると、銀行窓口での預金の払い出しや定期預金の解約も難しくなるので、介護費用を子が一時的に立て替えるケースもよくあるそうです。仮に親と子が財産の使い道について事前に話合いができていたとしても、民事信託をするなどの対策をとっていなければければ、思うような結果が得られなくなります。このようなことにならない為にも、一度専門家にご相談されることをお勧めいたします。