民事信託よくあるケース~このような時に活用しましょう~
事業継承
会社経営者が不慮の事故にあっても経営をストップさせないために
状況
T社長は会社を経営しています。その会社は、T社長が唯一の株主で、代表者でもありました。
そのT社長が事故にあい、意識不明で入院することとなりました。
T社長は、責任のある立場からご自分が死亡してしまった時のために、きちんと遺書も準備していました。
しかし、「遺言書の効力が発揮されるのは、死亡された後」となっています。T社長は意識不明ですがまだ亡くなっていないので、遺言書に書かれていることは実行できません。
株主総会での決議も、社長交代もできません。代表印も押せないので、決算処理や、金融機関から新たな資金の調達もできません。
残された社員が会社を存続させようとしても、打つ手がない状態になってしまいました。
T社長がとるべき対策
幸いにも、T社長の意識は数日で戻りました。最悪の事態」とはなりませんでしたが、そもそも「最悪の事態」とは社長の急死だけとは限らないのです。
T社長はその間にストップした経営と社員や取引先の混乱を聞き、会社や社員のためにどのような対策がとれるのかを改めて考えることとなりました。
「事業継承」とは社長(経営権を持った人)に不測の事態が起こったとしても会社が走り続けるように継承する「経営継承」と会社を資産としてとらえ、その資産を贈与もしくは相続する「資産の継承」のふたつに分けられます。
事業継承で株式を持つ社長と、信頼できる部下や後継者との間で信託契約を結べば、T社長が認知症になったり事故で寝たきりになったとしても、議決権の行使は信託契約を結んだ部下や後継者が行うことができるようになります。
つまり経営の意思決定が可能となりますので、スムーズに事業の継承ができるのです。
民事信託の組成
委託者兼受益者:社長(株主)受託者:後継者候補
このようにしておけば、受託者は会社の議決権行使も可能ですし、社長の死亡後に第2受益者を後継者とし、会社の経営がストップすることはありません。