民事信託・家族信託に関する最新情報
③成年後見制度や遺言状とはなにが違うのですか?
2023/06/19
成年後見制度とは?
認知症になってしまった後の対策の一つとして、今まで多くの方がこの成年後見制度が活用されています。成年後見人は、全般的な権限をもっており、本人のために契約や財産管理などを行ないます。
具体的には、預貯金の管理、施設との契約、不動産の契約、年金の手続きなどです。
この成年後見人は家庭裁判所から選任され、家庭裁判所の監督のもと活動します。
成年後見制度を活用した場合、家庭裁判所に成年後見人選任の申し立てを行いますが、希望した候補者が成年後見人に選任されるとは限りません。
この成年後見制度は「本人の財産を本人のために維持管理すること」が原則であり目的です。
まず贈与などの相続対策に向けた借入や不動産の担保提供行為等はできません。
そして積極的な資産運用はできないので、有価証券投資や不動産投資などもできません。
自社株式の管理・売却や議決権行使は成年後見人が行うことになります。
これらすべて中立的な立場につく後見人が、「本人の財産を本人のために維持管理すること」を目的に決定します。
一方で家族信託は、本人が元気な時に信託契約を締結しておくこと内容となりますので、任せた人(委託者・受益者)が病気や事故、認知症等で判断能力を喪失しても、託された人(受託者)が一切影響を受けずに、財産管理を継続できます。
これは、成年後見制度と大きな違いです。
遺言書とは?
遺言とは、被相続人(亡くなった人)が生前に「自分の財産を、誰に、どれだけ残すのか」についての意思表示をするものです。遺言書・家族信託どちらも財産の承継先を生前に決めておくことができます。
遺言書は、相続においては故人の意向という点で尊重され、最優先事項となります。 しかし、遺言書が絶対というわけではありません。
自分で書く手間がかかり、正式な手順を踏んでいないと無効になるケースもあります。
また死後、発見されないケースも多く見られます。
実は、家族信託はとてもしっかりしたもので、この遺言書よりも優先されるのです。
例えば遺言書では実家を長男に、家族信託契約では実家を次男にと財産の承継先が異なる契約になっていた場合、家族信託の契約書に書かれている内容が優先され、実家は次男が承継することになります。
そして家族信託と遺言書では効力発生時期が異なります。
家族信託契約では、契約自由の原則により、当事者が望む時期から効力を発生させることが可能ですが、遺言書は、遺言書を書いた人の死亡により効力が生じます。
つまり認知症対策として遺言書を利用することはできません。
また遺言書では、被相続人から直接財産を相続する相続人とその取り分である一次相続を定めておくことはできますが、相続人が相続したあと相続財産をどのように処分するべきということまでは指定できません。
一方、家族信託では、信託契約において、受益者連続信託をすることにより、財産がどのように承継されていくかを指定することができます。
一次相続の他、二次相続・三次相続以降の資産の承継先も決められる自由度が他にはなく、家族信託にはあるのです。
