民事信託とは? ~民事信託・家族信託の基本情報~
民事信託のメリット
民事信託(家族信託)のメリットは大きく分けて5つあります。
(1) 本人の体調や判断能力に左右されずに財産の管理・処分ができます。
本人の元気なうちから財産の管理や処分を託することができるのが民事信託です。
もしも、財産を託した後に本人の判断能力が低下・喪失したとしても、既に管理・処分の権限が移っているので影響はありません。財産を託された人が当事者となり財産の管理処分を行えるのです。
例えば・・・!
現在、自分で管理している賃貸アパートを持っており、その家賃収入で生計を立てているとします。元気で、管理能力があるうちに、その賃貸アパートの名義を子どもに移しておけば、もしも将来、自分が認知症なったとしても、賃貸アパートは子どもが所有・管理し、親を受益者とすることで、親は自分が生きている間、賃貸アパートで発生する利益を生活費に充てることができます。
(2) 成年後見制度の代わりとしての柔軟な財産管理や運用ができるようになる
自分の生存中の財産管理の方法を柔軟に設定できるようになります。
これまでの制度の場合、認知症や脳卒中などを患い、本人自身で財産管理を行うことが難しくなった場合は、家庭裁判所から成年後見人を選んでもらい、成年後見人に本人の財産の管理を任せることになります。しかし、成年後見制度は、本人の財産を維持する事に主眼が置かれているため、財産の運用が厳格になりすぎる傾向にあり、本人が過去に望んでいた財産の使い方が認められないことがあります。
そこで、本人の意思がはっきりしている内に、予め信託契約を結んでおき、財産の管理や使い方の取り決めをしておくことで、本人に介護が必要となった場合でも、本人の意思に基づき適正で柔軟性のある財産の運用ができるようになります。
以上のように、あくまで資産を維持が目的であり、財産の処分や投資に回すには裁判所の許可が必要であったり、本人が望まない人が成年後見人となることがある、といった、成年後見制度に不都合な部分を柔軟に対応できるようになったものが民事信託です。
成年後見制度とは?
高齢化、認知症による財産管理能力の不安や喪失に対処するために制定されたのが、成年後見制度です。2000年4月1日より制定されました。
※詳しくはこちらのページでも解説しています。→「民事信託とその他の制度との違い」
(3) 民事信託には≪遺言+死後事務委任契約≫の効果がある
本人の死亡により遺産を貰った人が既に財産管理の能力が無い場合には、結局その貰った人に成年後見人を就けて、財産管理を担ってもらう必要が出てくるでしょう。
しかし、民事信託だと、(「遺言」の機能として本人が死亡した後の財産の承継者を民事信託の契約書の中で指定することができ、本人が亡くなった後も引き続き)貰った人の為に受託者が財産管理を行うことができるので、成年後見人をつけずとも財産の管理が可能となります。
例えば、高齢のご主人が亡くなった後に遺される認知症の妻がいるとすれば、引き続き信託の仕組みの中で、妻の生涯にわたる財産管理・生活資金をサポートすることができるのです。
死後事務委任契約とは?
死後事務委任契約とは、亡くなられた後の葬儀、納骨やその他諸手続き、遺品の整理などを第三者へ委任する契約です。
(4) 民事信託で自分の思い通りの資産承継が実現できる!
遺言の一つの注意する点は、遺言では自分の相続についてしか決めることができないことです。
例えば、ある人が、直系の子孫代々に財産を残したいと思い、息子に全財産を、そして息子が死んだら孫に全財産を相続させるという遺言を残したとしても、有効なのは息子に相続させるという部分だけで、実際息子が孫に相続させるかどうかは息子しか決めることができないのです。
また、認知症や障がいを持つ方に財産を承継させたとしても、承継者は遺言等で次の承継者を指定する事ができません。
ここで有効なのが民事信託です。民事信託では、次の次の資産の承継者を指定することができますので、後々の遺産分割協議による問題点を回避し、本人の想いをカタチにする事ができます。
例えば・・・!
自分が亡くなったら妻へ、妻が亡くなったら長男が、長男が亡くなったら、その長男の子へと、一次、二次、三次と言った形で財産の取得者を事前に決めておくことができます。(これを「受益者連続機能」といいます)
そうすることで、直系の子孫代々に財産を残したいという、本人の意思を確実に実現できます。
(5) 民事信託で不動産の共有が原因の問題を予防できる
不動産を将来的に兄弟や・親戚で共有名義にせざるを得ない場合、あるいは、既に兄弟等で不動産が共有名義になってしまっている場合に、もし不動産を売却する為には共有名義人全員の同意(契約書に実印)が必要になります。ひとりでも売却に反対する人がいたり、認知症等で意思表示ができない人がいると、ベストなタイミングで不動産を有効活動することができなくなるリスクがあります。
そこで、民事信託を使って、共有者全員が一人の代表者に信託をすることで(または第三者に信託)、その代表者がベストなタイミングで不動産を有効活用することができるようになります。
不動産の共有名義とは...
共有名義がの問題が解消されないまま次の相続が発生してしまうと、その相続についてさらに複数の相続人が増えてしまうという事態になりなります。結果的にどんどん共有名義者が増えてしまうことになります。不動産の共有相続は、遺産分割のトラブルを先送りにしているだけで、相続についての根本的な解決とは言えないのが現状です。