民事信託とは? ~民事信託・家族信託の基本情報~
税金について
民事信託(家族を信託の当事者とするような信託)に関する効力が発生した場合、税務上は「誰が信託財産に係る経済的な利益を受けたか」ということに着目し、実際に利益を受ける人に対して、税金が課税されます。
民事信託では、課税関係や課税金額が受益者や受益権の中身によって変わります。民事信託を行うと、所有権名義が受託者に移転することになりますが、受託者はあくまでも管理・処分する権限しか持っていないので、信託財産から生じる収益権は受益者にあります。
つまり、税務上は受益者を所有者に置き換えて課税されることになるのです。
日本の税務には実体主義、受益者負担の原則があります。
名義人や契約形態に関わらず「実際に利益を受けている者」に対して課税される仕組みです。
● 民事信託設定時の課税
信託設定時の課税について、注意すべきポイントは委託者と受益者が同じであるか、異なるかです。(委託者と受益者が同じ信託を「自益信託」、異なる信託を「他益信託」といいます。)
■自益信託の場合の課税(委託者=受益者)
自益信託の場合、つまり委託者と受益者が同一人物なので、信託の前後で経済価値の移動がないため、信託設定時に受益者には流通税以外の課税はありません。
■他益信託の場合の課税(委託者≠受益者)
他益信託の場合、つまり委託者と受益者が異なる場合は、税務上、信託の前後で経済価値の移動があることから、課税があります。この場合、適正な対価の授受が行われたかどうかで委託者・受益者に課税される内容が変わってきます。
● 委託者に課される税金
他益信託(委託者≠受益者)の場合は課税があることがあります。
● 受託者に課される税金
民事信託では、受託者はが財産を管理処分することになりますが、実質的な所有権は持っていませんので、基本的には課税されることはありません。ただし、信託財産が不動産の場合、流通税がかかります。
また、信託財産である不動産は登記記録上、受託者の名義となりますので、信託登記した年の翌年より固定資産税の支払通知書が受託者に届きます。ただ、実際の所有者は受益者ですので、信託財産の管理費用として、信託財産から支払う事になりますので、実質的には、受益者が負担している形になります。
● 流動税
(1)登録免許税
不動産の信託では、不動産の名義を委託者から受託者に変更する際に登録免許税が課税されます。 通常、売買や贈与による所有権移転登記では、「固定資産税評価額×2.0%」の登録免許税がかかりますが、信託による所有権移転登記の場合は、「固定資産税評価額×0.4%(現在、土地は0.3%)」となり、通常の5分の1ですみます。
(2)印紙税
信託契約書作成した場合、印紙税は1通につき200円です。
(3)不動産取得税
信託設定時、委託者から受託者への信託財産の移転における不動産取得について不動産取得税の課税はありません。