民事信託には、相続や事業承継にピッタリな機能があり、下記を実現することができます。

　・生前の自由な財産管理ができる
　・管理・処分権と収益権の分離ができる
　・相続(遺産分割)の詳細を決めることができる
　・２代、３代先まで財産の承継先を決めることができる
　・相続後に残された人の生活保障が可能

これらの機能を組み合わせて、財産の管理方法や・承継方法を組み立ていくのです。
それぞれの機能について、詳しくご説明します。

(1) 長期的管理機能

信託の目的に従って、受託者に信託財産を長期的に管理運用させ、その中で財産を活用や処分をし、そして最終的には財産を承継させる機能です。
例えば、高齢の親や配偶者、認知症の親や配偶者への生活費や医療費、施設利用費を確実に管理給付したり、知的障害者や高次脳機能障害者の財産を管理処分し、知的障害者等が死亡するまでの長期間にわたって安定した生活を確保するために、この機能を有する信託が活用されます。
信託設定時における信託の目的につき、信託当事者の意思能力の喪失や死亡という変化にも影響を受けず、長期にわたって維持する事ができる機能です。(意思凍結機能)
信託受益権を複数の受益者に連続して承継させることができます。(受/益者連続機能)
民事信託での当初受益者を自分、第二受益者を子、第三受益者を孫に、というような信託を設定するように、後継ぎ遺族型受益者連続信託はこの機能の表れです。

(2) 受託者裁量機能

受託者が幅広い裁量権を行使して、信託事務の処理を行う機能。
受託者が信託設定時に考慮し得ない事情を、その後も十分に斟酌できるよう受託者に裁量権を与えて、信託事務の処理をさせる機能をそう呼びます。

(3) 利益分配機能

信託から生じる利益を受益者に給付し、支援をする機能です。
信託は、支援を必要とする受益者への財産の給付が確実になされる機能を有しています。
高齢の親や配偶者、認知症の親や配偶者あるいは知的障害者等の場合、多くは確実な給付が確保されている限り、一度に多額の財産の給付は不要であり、必要な都度必要な限度で、生活費等の給付を受けられればよいということで信託が活用されます。
また、受益者がいわゆる浪費癖の強い子の場合などは、その子が信託財産のある限り生涯生活に困らないように、やはり必要な時期に一定の限度で生活費を給付することによって、親が決めた信託の目的を達成することができます。また、この利益分配機能は、受益者複数の設定とその優先順位の指定ができるという機能も有しています。

(4) 集団的管理機能

不特定多数の委託者から拠出された財産を、ひとつのまとまった集団として一括管理運用するもので、複数委託者の信託財産に対する管理運用の機能です。

(5) 転換機能

信託財産が信託受益権となり、信託目的に応じて、財産の属性または財産権の性状などを転換できます。

たとえば...!

・効率的な運用を行うために多数の者が信託した金銭をまとめる
・投資しやすくするために大きな信託財産を小口化する
・流通しやすくするために不動産などの信託財産を受益権にする

(6) 倒産隔離機能

受託者の債権者は、原則として、その信託財産に対して強制執行などを行う事はできず、受託者が破産しても信託財産はその破産財団に組み込まれることはありません、これは信託財産は受託者名義になっていますが、受託者の固有の財産ではないからです。信託された財産は、受益者のためにのみ管理・運用され、信託財産は原則として、受託者の債権者から独立しています。